設計者上がりの建築コンサルタントブログ

建築コンサルタント、プロジェクトマネージャー、コンストラクションマネージャーの視点

建築業界の直面する課題(非効率性)について

建設業の課題:蟻地獄

建設業の課題という蟻地獄からの脱出イメージ画(画像生成AIによる作画)

私は建築プロジェクトマネジメントを仕事にしていますが、特に昨年あたりから建築業界の大変さに直面しています。

①建設価格の高騰

②人出不足と手持ち案件の多さによりゼネコンやサブコンが受注を断っている状況

③上記の2点、特に②によって事業スケジュールが立てられないという状況

 

昨今の建設業界は、複数の問題と課題に直面しています。特に、深刻な人手不足と建設業の働き方改革による2024年4月からの残業規制の開始は、業界全体の生産性と効率性に大きな影響を及ぼしています。

高齢化社会の進展に伴い、経験豊富な技術者や労働者の退職が相次ぎ、若手の後継者不足が顕著になっています。建設業界の賃金の低さと長時間労働という厳しい労働条件は、特に若い労働者にとっては大きなデメリットであり、新しい労働者の獲得を妨げています。

若い人材が建設業界に就業じてもらうためには、仕事に魅力を感じてもらうとともに労働環境の向上が必須となります。そのためにも生産性の向上に取り組む必要があります。

労働時間の厳格な規制は、残業時間の削減や現場休所が増える事でのプロジェクトの長期化を招き、コスト増加の要因となっています。これらの問題を克服し、建設業界の持続可能な成長を実現するためには、就業人口を増やす事と生産性の向上が急務です。

生産性を向上させることは、限られた資源と時間を最大限に活用し、プロジェクトの効率と品質を高めるために不可欠です。しかし、建設業界には、その目標達成を妨げるいくつかの非効率性が存在します。

建築業界はその複雑さ、プロジェクトの大規模性、そして多様なステークホルダーの関与によって、効率性の面でしばしば困難に直面しています。今後、このブログでは、建築業界における仕事の仕方の非効率性について考察し、改善策を提案していきたいと思います。

1.コミュニケーションの障壁

建築プロジェクトには、クライアント、コンサルタント、設計者、エンジニア、施工者、規制当局など、多様なステークホルダーが関与します。これらのグループ間でのコミュニケーションが非常に多岐に渡り複雑であることが業務の効率性に大きく影響を及ぼし、マンパワーの増加や労働時間やコスト超過を招く主要な原因の一つです。

 

2.プロジェクト管理の不統一

プロジェクトの計画、スケジューリング、実行に関する情報が統一されたシステムで管理されていないことも、非効率性の一因です。これにより、プロジェクトの全体像を把握することが難しくなり、重要な決定に必要な情報が不足することがあります。

 

3.プロジェクトの変更管理の課題

建築プロジェクトでは、設計期間や施工期間を通じて仕様変更や設計変更が頻繁に発生しますが、これらの変更を効率的に管理することが困難である場合が多いです。変更が適切に記録されず、必要な関係者に伝達されず、作業の重複や誤りが生じるトラブルが生じる事が多いです。

 

4.労働力の不足と専門的技能の継承の課題

建築業界では、特に専門的なスキルを持つ労働力の不足が課題となっています。これにより、プロジェクトの品質が低下したり、スケジュールが遅れたりすることがあります。

建設業界の専門的知見は暗黙知によるところも大きく、技術的知見の継承も課題となっています。

 

5.持続可能性への移行の遅れ

建築業界における非効率性は、多くの場合、過去に築かれた建設に関するプロセスや仕組みの更新不足に根ざしてると思われます。過去においては残業時間を増やし、多量の人材を投入してなんとか仕事をやり切るといった根性論がまかり通っていました。

時代の変遷とともに、建設業界においてもそのような仕事のスタイルは通用しなくなり、持続性のあるビジネス運営が求められています。

 

これらの建設業界の非効率性からの課題を解決するためには、建設業界だけでなく発注者(国、自治体、民間)も一体となってデジタル技術の活用、プロセスの再構築、持続可能な業務遂行の仕組みづくりへの意識づけなど、複数のアプローチが必要と考えられます。また、大学などの教育機関とも連携して教育と訓練プログラムへの投資により労働力の不足と技能の不一致を解消し、持続可能な建築への移行を加速することも重要と考えています。

建設業界は現在が直面している課題を克服し、より効率的で持続可能な未来を築くことが可能になるように私なりの情報発信をしていきたいと思います。

建設業の課題モンスター

建設業の課題は強大なモンスターか?(画像生成AIによるイメージ画)